ルツとナオミ

Ruth in the Fields

 イスラエルが飢饉に襲われた時、ナオミは夫やふたりの息子と共にモアブに移り住んだ。ところが夫は早くに亡くなり、モアブで結婚した息子たちも母を残して死んでしまう。ナオミが故郷に戻ることを決めると、次男の嫁ルツは姑に従ってベツレヘムへと移住した。

 大麦の収穫時期だった。ルツは畑に出て、毎日落ち穂を拾った。畑の持ち主であるボアズの配慮もあって、ルツは大量の落ち穂を拾うことができた。ボアズはナオミの亡き夫の親戚にあたる、真面目で働き者の男だ。ナオミはルツに助言して精一杯の身繕いをさせると、作業小屋で熟睡している彼の寝床に忍び込ませた。ボアズはこの出来事に驚いたが、ルツの身柄と相続すべき財産について親戚の同意を取り付け、彼女を自分の妻にすることに決めた。

 ふたりの間には、オベドという息子が生まれる。ナオミは孫の誕生を喜んだ。オベドにはエッサイという息子が生まれ、エッサイからはあのダビデ王が生まれた。

(ルツ記)


【解説】

 旧約聖書は国家や民族としてのイスラエルの歴史を綴っているが、ルツ記の主人公は異民族であるモアブ人の女性だ。

 ルツはもともとイスラエルの神を崇拝していたわけではなく、産まれてから嫁ぐまでは彼女自身が属するモアブの神を拝んでいた。彼女はイスラエル出身の夫に嫁いだが、不幸なことに子供もできないうちに夫は亡くなってしまった。だが彼女は自分の部族や神のもとには戻らない。彼女は夫の死後も、亡き夫の母であるナオミに従おうと決意するのだ。そして故郷に戻れと諭すナオミにこう言う。

 「あなたを見捨て、あなたに背を向けて帰れなどと、そんなひどいことを強いないでください。わたしは、あなたの行かれるところに行き、お泊まりになる所に泊まります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神。あなたの亡くなるところでわたしも死に、そこに葬られたいのです」

 イスラエル民族の子孫であるユダヤ人には、強烈な「選民思想」があると言われている。一般的にはこれを「自分たちは神に選ばれた特別な民族だ」という意味に解するし、聖書の中にも神がイスラエルを選んで祝福したという記述がしばしば登場する。だがユダヤ人たちの間には、「選民」についてそれとは正反対の解釈もある。

 神はイスラエルに限らず、あらゆる民族に対して自分自身の姿を明らかにした。しかしその神を「我らの神」として選んだのはイスラエルの人々だけだった。イスラエルは神に選ばれた「選民」であると同時に、神を選び取った「選民」でもあるのだ。イスラエルの神はイスラエル以外に自分を受け入れる者がいれば、その者に対してイスラエルと同じ恵みを与える。神は出自によって人を差別しないのだ。

 ルツ記にはそんな神の性格が、丁寧に描かれている。姑ナオミの神を「わたしの神」として受け入れたルツは、神の民であるイスラエルの一員になる。そして輝かしいダビデ王朝を生み出す祖先のひとりとなるのだ。

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