サムソンとデリラ

Samson

 イスラエルにサムソンという怪力の青年がいた。素手でライオンを倒すほどの怪力で、イスラエルと敵対するペリシテ人を大勢殺した。彼は士師として20年を過ごした。

 サムソンがデリラという女を愛するようになると、ペリシテ人たちは彼女から怪力の秘密聞き出そうとする。デリラは何度もサムソンに強さの秘密をたずねるが、彼は本当のことを教えない。だがある日とうとう、生まれて一度も切ったことがない髪が強さの秘密だと話してしまう。ペリシテ人はサムソンの髪を切り落として力を奪うと、両目をえぐって牢で粉をひかせた。

 その後しばらくして、ペリシテ人の領主たちはサムソンを宴会の余興に引き出した。だがそれまでに再び髪が伸びていたサムソンは、建物を支える柱に寄りかかると力任せにそれを押し倒す。こうして多くの人たちが、サムソンと共に建物の下敷きになって死んだ。その数は、彼がそれまでに殺した敵を全部合わせたより多かったという。

(士師記 13〜16章)


【解説】

 士師記の中で一番有名な人物は、怪力自慢のサムソンだろう。子供向けの聖書物語にもたいてい登場する人気者で、1949年にはセシル・B・デミル監督の手で『サムソンとデリラ』という映画にもなっている。ある鞄メーカーが1941年に発売した頑丈で耐久性抜群のスーツケースは、彼にちなんで「サムソナイト」と名付けられた。これがサムソナイト社の名前のルーツ。(韓国の大手メーカー「サムスン」もかつては「サムソン」と表記していたのだが、これは漢字で「三星」と書くらしい。旧約聖書とのつながりは不明だ。)

 サムソンは20年間、士師としてイスラエルを裁いたという。だが聖書を何度読んでも、怪力自慢の無鉄砲な乱暴者としか思えない。あらすじでは省略してしまったが、彼の暴れん坊ぶりは想像を絶するものだった。例えば自分の結婚式で着替え30着を賭けた勝負に負けると、すぐ外に出て見ず知らずの赤の他人30人殺して着物を剥ぎ取った。これでは強盗殺人犯だ。

 自分の花嫁を放り出して逃げてしまったくせに、彼女が別の男に嫁いだと聞くと腹いせにペリシテ人の畑に手当たり次第に火を付けて逃げた。とばっちりを受けたのが花嫁とその父。ふたりはペリシテ人の恨みを買って焼き殺されたという。その後ユダの町はサムソンをかくまっていると誤解され、ペリシテ人たちに攻め滅ぼされるところだった。ユダの人たちは誤解を解くためサムソンを縛ってペリシテ人たちに引き渡す。しかし彼は自分を縛り上げたロープを簡単に引きちぎると、たまたま近くに落ちていたロバのあごの骨を振り回す。サムソンは鼻歌を歌いながら、千人もの人々を撲殺したという。

 サムソンの生涯は遊女デリラとのエピソードが有名だが、それより前半の天真爛漫な大量殺戮のほうがずっと面白い。荒唐無稽で現実離れもはなはだしく、ナンセンスなスラップスティックコメディ(ドタバタコメディ)を見ているような気にさせられる。

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