デボラとバラク

gravure dore bible - debora chantant son cantique

 ヨシュアが亡くなり、彼に従ってカナンに入植した世代も年老いて世を去ると、新しい世代は神を忘れてカナン土着の神々を拝むようになった。これに怒った神はイスラエルが周辺民族に蹂躙されるのを放置し、敵の圧迫と迫害がひどくなった時だけ、人々の上に指導者となる士師を立てた。

 アラム王から人々を守ったオトニエル、モアブ王を倒したエフド、ペリシテ人を打ち払ったシャムガルなどが最初の士師たちだ。

 エフドの死後、イスラエルはカナンの王ヤビンによって20年に渡る支配を受けた。エフライムの女預言者デボラはナフタリからバラクを呼び寄せて1万人の軍勢を整えると、タボル山でヤビンの将軍シセラの戦車部隊と戦った。神の加護を受けたイスラエル軍はシセラを打ち破り、敗走したシセラは逃げ込んだ天幕でこめかみに天幕の釘を打ち込まれて死んだ。こうしてカナン王の力は衰え、やがて滅びてしまう。デボラのもとで、人々は40年の平和を得た。

(士師記 1〜5章)


【解説】

 モーセとヨシュアの死によって、出エジプトから約束の地カナンに至る旅の物語が終わる。これ以降しばらくはイスラエルの全部族を束ねる強力な指導者が現れず、「士師」と呼ばれる各地域の指導者が活躍する時代になった。士師は「裁く者」という意味で、「裁き司」と訳されることもある。英語の聖書では「judge」と訳されているが、これは裁判官や判事という意味の言葉だ。士師は日頃は人々の係争を調停する政治家や判事として働き、外敵が現れれば軍事指導者としての役目も担った。

 政治と軍事のどちらに手腕を振るうかは、士師によって異なっている。オトニエルは判事であり、同時に軍事指導者だった。エフドは軍事指導者だ。シャムガルは腕自慢の英雄豪傑の類かもしれない。デボラは政治指導者であり、軍事面はバラクが担当していたようだ。こうした人々はイスラエル民族にとって救国の英雄だが、どの士師もカナン地方全域を統治したわけではない。彼らの力が及ぶ範囲は限定的だった。

 聖書の描く古代世界は男性中心で女性は従属的な地位だったと思われがちだが、デボラは聖書に登場する最初の女性指導者だ。歴史の中の女性指導者には、邪馬台国の卑弥呼やイギリスのエリザベス1世のように生涯独身を貫いた人も少なくない。それが指導者としてのカリスマ性を高めたのだろう。しかしデボラは結婚している人妻だった。夫のラピドトが何をしている人かは聖書に書かれていないが、デボラは有名な女預言者であり、その名は遠方まで知られていたようだ。

 デボラを助けて軍事的な指揮を執ったのはバラクだろう。彼がカナン軍に対抗する1万人の兵を集めたのだ。だがこの物語の中では、彼の影が薄い。敗走する敵将シセラはカイン人ヘベルの妻ヤエルの天幕に逃げ込み、そこで安心して寝入ったところをヤエルに討ち取られている。バラクの活躍あってこその勝利だったはずだが、この物語の主役はやはり女性たちなのだ。

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