モーセの死

Gustav_Jaeger_Bileam_Engel

 イスラエルの人々はネゲブでカナン人のアラド王と戦い勝利したが、疫病の流行などもあってそのままカナンには入ることはできなかった。そこでエドムを迂回してモアブに入り、通過を妨害するアモリ人の王たちと戦って道を切り開いて行った。

 モアブ王バラクはイスラエルを恐れ、高名な占い師バラムを遠方から招いた。だがバラムは王が望むようにイスラエルを呪うことができず、逆にイスラエルを祝福して帰ってしまった。

 イスラエルの人々はモアブで宿営する間に周辺の人々と親しくなり、地域の神々の祭事に参加する者も現れた。モーセはこうした人々を厳しく処罰すると同時に、影響力の強い周辺部族を滅ぼした。

 年老いたモーセはカナンの全域が見渡せる山の上に登った。そこから見えるのは神がイスラエルに約束した土地であり、モーセが入ることを許されない土地だった。モーセはヨシュアを自分の後継者に指名しモアブの地で亡くなった。120歳だった。

(民数記 20〜申命記)


【解説】

 エジプトを逃れたイスラエルの人々の旅が大詰めに差し掛かると、行く先々で周辺異民族との争いが起きるようになる。

 古代の戦争は人間同士の戦いであると同時に、互いが信仰する神々同士の戦いであり、呪術師同士の戦いでもあった。モアブのバラク王と占い師バラムの物語は、神が異国の占い師(呪術師)にまで強い影響力を及ぼしているというエピソードだ。本文では省略してしまったが、神の使いに道をふさがれて足を止めたバラムのロバは、聖書の中で唯一人間の言葉を喋った動物であるらしい。

 エジプトの奴隷だったイスラエルの民を解放し、40年にも渡ってカリスマ的なリーダーとして彼らの旅を導いてきたモーセだが、彼自身は神が約束したカナンの地に入ることができないままに亡くなった。その理由は、彼が神の命令を破ったからだと聖書は説明する。

 荒野で人々がモーセに水を求めたとき、神は「岩に向かって水を出せと命じれば、人々と家畜のための水を岩から出す」とモーセに約束した。ところがモーセは神に言われた手順を守らず、岩を杖で2度叩いた。それでも水は出たのだが、神はこのモーセの間違いをとがめたのだ(民数記20章)。モーセはこのたった1度の間違いによって、約束の地カナンに入ることなくモアブの地で死に葬られることになった。

 それにしても、「岩に命じる」のと「岩を杖で叩く」のとのわずかな違いで、これほど過酷な罰を受けなければならないものなのだろうか?

 聖書はこれらの記事をモーセ自身が書いたと述べているが、実際にはこれをずっと後世の人々が書いている。カナンに近づき異民族たちと接触しながら約束の地を目指した旅の記述の中には、捕囚から解放されたイスラエルの人々が他の民族と接触しながら故郷に帰還し、破壊された神殿の再建を目指した歴史が投影されているのだろう。そこで何よりも重視されたのは、神殿で行われるもろもろの儀式の純粋性だったに違いない。

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