ヤコブ

Jacob

 ヤコブは父のイサクをだまし、兄エサウが得るべき長子の祝福を騙し取った。このことで兄の恨みを買ったヤコブは、伯父ラバンのもとへと逃れる。

 ヤコブはラバンの娘ラケルと恋に落ち、結婚まで7年も伯父の下で働いた。だが結婚式の日、伯父の策略でヤコブはラケルの姉レアと結婚させられてしまう。ラケルと結婚するため、彼は伯父のもとでさらに7年働くことになった。

 ヤコブとレアには多くの子供が生まれたが、ラケルにはなかなか子供ができなかった。彼女の最初の子供が、ヤコブにとって11番目の息子ヨセフだ。ヤコブは生まれ故郷のカナンに戻ることを決め、伯父ラバンの制止を振り切って旅立った。旅の途中で天使と格闘したヤコブは、そこでイスラエルという名を与えられる。

 故郷に戻ったヤコブは兄エサウと再会するが、兄は既に昔の怨みを忘れ、兄弟は再会を喜んで抱き合った。だがヤコブの愛妻ラケルは、末の息子ベニヤミンを生んで亡くなった。

(創世記 27〜35章)


【解説】

 映画であれ小説であれ、模範的な善人キャラより、腹に一物ある悪党キャラの方がずっと面白い。ヤコブ(イスラエル)はそうした悪党キャラだ。頭の回転が速くて機転が利き、自分の利益のために身内の人間さえ堂々とだます図太さと大胆さを持つ、用意周到で冷静沈着な男だ。彼は兄のエサウを出し抜くために、父イサクさえ平然とだましてみせた。

 聖書はヤコブが兄を差し置いて長男としての祝福を得られた理由について、あれこれと言い訳めいたエピソードを並べ立てる。例えはエサウは豆のスープと引き替えに弟に長子の特権を売り渡したとか、エサウは地元の女たちと結婚して一族の神をないがしろにしたとか、イサクをだましたのはヤコブの意志ではなく母リベカの差し金だとか……。

 しかしそうして周囲に責任を転嫁するのは、ヤコブ自身に主体性や自発的な意志がなかったようで、かえってヘンな話になってしまうと思う。ヤコブはハランに逃れた後も伯父のラバンに取引を申し出て出し抜いたり、カナン帰還の際にはエサウの恨みを買わぬよう慎重で用心深い態度を取っている。ヤコブの行動のもとになっているのは、やはり彼自身の意志と性格なのだ。

 知恵の働きでは誰にも負けないように見えたヤコブが、ラケルとの結婚では伯父ラバンに見事一杯食わされるというのも面白い。恋に夢中になった人間は、少し正常な判断力を失うのかもしれない。だがヤコブとラケルのこの恋物語は、旧約聖書の中でももっとも感動的なラブストーリーだと思う。(このラケルもおとなしそうに見えて一筋縄では行かない女で、ハラン脱出の際は家に伝わる貴重な神像を盗み出したりしているのだが。)

 ヤコブはイスラエルと名を改め、彼の12人の息子たちの子孫はイスラエルの民、イスラエル人と呼ばれるようになった。現在パレスチナにあるユダヤ人国家がイスラエルと名乗っているのも、ユダヤ民族の父祖であるイスラエルの名に由来するものだ。

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