イサク

Isaac

 妻サラが亡くなると、アブラハムは土地の者から墓所を買い取って埋葬した。息子のイサクが結婚する年頃に成長すると、彼は故郷に人をやって息子の妻に相応しい娘を探させた。見つかったのは親戚の娘リベカだった。

 アブラハムは亡くなり、イサクにはリベカとの間に双子の息子が生まれた。イサクは長男エサウを愛し、妻リベカはヤコブを愛した。成長したエサウは狩りが得意だったが、ある日空腹で帰宅した際、わずかな食事と引き替えに長子の特権を弟ヤコブに譲り渡す。

 近隣で飢饉が起こり、イサクたちはペリシテ人の王アビメレクのもとに逃れた。イサクはリベカを妹だと紹介したが、やがて真相がわかると王はイサクを恐れて一家の保護を部下たちに約束させた。その後王のもとを去ったイサクは次々に井戸を掘って勢力を広げ、ペリシテ人たちとの間にしばしばいさかいが起きる。アビメレク王はイサクを訪問して、互いに危害を加えないという契約を交わした。

(創世記 23〜26章)


【解説】

 アブラハム、イサク、ヤコブという三代の族長たちの中で、イサクは一番印象が薄くて地味な存在だと思う。父のアブラハムがあまりにも偉大すぎて、息子のイサクには華やかな部分があまりない。息子のヤコブも波瀾万丈の人生を送るが、それに比べてもやはりイサクは地味な存在だ。

 イサクにまつわる印象的なエピソードの多くは、父アブラハムや息子ヤコブの物語の脇役なのだ。例えばキリスト教美術の中でもしばしば扱われる「イサクの奉献」のエピソードは、息子イサクではなく、父アブラハムの物語の一部になっている。息子ヤコブが産まれた後は聖書記者の関心がそちらに移ってしまい、イサクは物語の外にはじき出されてしまうのだ。

 だがイサクにまつわるエピソードが地味になる最大の原因は、彼がほとんど住居を移動せずカナン地方一体で全生涯を終えたことも大きく影響している。

 彼の父アブラハムは全生涯をかけて、中東からエジプトにかけての肥沃な三日月地帯全域を移動して回った。息子ヤコブ(イスラエル)はカナンに生まれ、ハランに移動して青年期から壮年期までを過ごしてからカナンに戻り、最後はエジプトに行って死んでいる。どちらも長い距離を移動しているのだ。

 しかしイサクは基本的にはカナン地方から動かない。飢饉で避難が必要になったときも、海に近いペリシテ人の土地に一時的に滞在しただけだった。彼はそこで地元の遊牧民たちと衝突し、飢饉が落ち着いた頃には再びもとの場所に戻っている。

 イサクがこうしてカナン地方のほぼ一箇所に滞在していたのは、神が「エジプトに行くな」と命じたからだと聖書は説明している。だがおそらくイサクは、どこにも移動する必要がないから移動しなかったのだ。彼の時代には生活も安定していて、周囲の先住民たちともそれほど深刻な対立が起きなかったのだろう。

 彼をもっとも悩ませたのは、ふたりの息子の身の処し方という家族の問題だったに違いない。

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イサク」への2件のフィードバック

  1. 【解説】第4段落目の
    ”息子イサクはカナンで生まれ育ち~”の部分は
    ”息子ヤコブはカナンで生まれ育ち~”の間違いではないでしょうか?

    いいね

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