アブラハム

Abraham, Sarah and Hagar

 ハランに住むアブラムは「カナンへ行け」という神の言葉に従い、妻サライと甥のロトを連れて旅立つ。カナン地方が飢饉に襲われると、一家はエジプトに逃れた。エジプト王はサライを見初めて後宮に入れるが、やがて人妻だとわかり一家はエジプトを去る。

 天の使いから子供が生まれると予告され、アブラムはアブラハムに改名し、サライはサラになった。ロトは成長して独立していたが、戦争に巻き込まれてソドムの町で暮らしていた。罪深い町ソドムは神に滅ぼされ、ロトの家族はその直前に脱出する。だがロトの妻は後ろを振り返って塩の柱になった。ロトの娘たちは酔った父と交わり、子供を身ごもったという。

 アブラハムと女奴隷の間に息子イシュマエルが生まれた。だが妻サラが息子イサクを生むと、イシュマエルと母親は追い出されてしまった。神はアブラハムの信仰を試そうとイサクを生け贄に捧げるよう命じ、彼の信仰を確認すると身代わりの羊を与えるのだった。

(創世記 12〜22章)


【解説】

 創世記はアブラハムの登場によって、神話から族長たちの時代へと入っていく。

 古代史の世界では、チグリス川とユーフラテス川流域に広がるメソポタミア地方から、地中海東岸のフェニキア地方、エジプトまでつながる広大な地域を「肥沃な三日月地帯」と呼ぶ。アブラハムの生涯は、この広大な三日月地帯を移動することにほぼ費やされた。

 聖書の記述によれば、アブラハムはもともとユーフラテス川の下流域にあった大都市ウル(現在もイラクに遺跡があるようだ)に住んでいた。彼は父や兄弟たちとユーフラテス川の上流地域へ移動してハラン(現在のトルコ南東部にあった都市)に落ち着いたが、やがて妻と甥を連れてカナンを目指した。その後カナン地方を飢饉が襲ったことから一時エジプトに避難したが、再びカナンの地に戻ってくる。

 アブラハムの生涯は、その後の一族や民族のロールモデルになっている。

 彼の息子イサクはハランから妻を娶り、飢饉が起きると他国に逃れて妻を妹だと偽った。孫のヤコブはアブラハムがカナンに旅立つ前に暮らしたハランで青年時代を過ごし、家族を作ってからカナンに帰還する。ひ孫のヨセフの時代もカナンは飢饉に見舞われ、一族はエジプトに移住して、その後モーセの時代になってカナンの地へと帰還する(出エジプト)。

 エジプトへの避難というモチーフは、そのずっと後の新約聖書の時代に、イエス・キリストがヘロデ王の迫害を逃れるという物語の中でも繰り返される。

 それだけではない。近代国家として1948年に建国されたイスラエルも、パレスチナの地にユダヤ人国家を建設する根拠として「アブラハムの契約」を用いている。アブラハムが実在する人物かどうかは不明だが、彼が歴史に与えた影響は量り知れない。

 聖書はアブラハムの後継者をイサクだとしているが、イスラムの聖典クルアーンでは、彼の最初の息子イシュマエルが正嫡としてアラブ人の祖先になったとしている。

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