大洪水

Noah's Ark

 人間たちは数を増やし、それに連れて地上の悪もまた増えることになった。神は人間たちの間に悪が広まる様子を見かねて、彼らを滅ぼしてしまおうと考えた。しかしノアだけは神の目から見て正しい人だったので、彼の一族だけは滅ぼさずに助けることとした。

 神はノアに命じて巨大な箱舟を作らせた。そこにノアの家族のほかに地上の獣や鳥たちを一つがいずつ乗せ、大量の食料を積み込むと、これまでなかったような大雨が降ってきた。雨は40日間降り続け、地上の山々もすべて水に沈んだ。この洪水で地上の人間も動物もすべて死に絶えたが、箱舟に乗っている者たちは無事だった。雨が降り始めてから150日後にようやく水が引き始め、箱舟はアララト山の上に漂着した。

 箱舟から放ったハトがオリーブの小枝をくわえて戻ったことで、ノアは地上から水が引いたことを知った。彼は箱舟の戸を開いて動物を外に出し、ここからまた新しい命が地上に広まって行った。

(創世記 6〜9章)


【解説】

 大洪水の神話は世界各地に残されていて、物語の流れは概ね共通している。人間が増えたことに神が不快感を抱き、世界を滅ぼそうと決意する。だがごく一部の人間だけが洪水を生き延び、その後の世界の祖先となるのだ。

 聖書にあるノアの箱舟の物語は、バビロニアの神話と多くの共通点を持つらしい。おそらく古代メソポタミアの神話が、共通のベースになっているのだろう。だが聖書に書かれていることが歴史的な事実だと考える聖書原理主義者たちは、ノアの箱舟の物語こそが世界各地にあるあらゆる洪水物語のルーツなのだと主張する。全人類はすべてノアの子孫なのだから、太古の大洪水をそれぞれが別の形で記憶していても不思議ではないわけだ……。

 だが洪水神話はたった一度の大洪水の記憶が世界に広まったわけではなく、世界のどこでも、古代の人々とって洪水が共通の脅威だったことを意味しているのだと思う。気象予報のための知識も方法もなく、灌漑や治水の技術が乏しかった古代人たちにとって、突然天候が急変して人間の暮らしが根こそぎ流されてしまうのは「神の怒り」と表現するしかない事だったに違いない。

 突然の天災で多くの人命が失われるのは、遠い古代の話とは限らない。台風やハリケーンでは今でも毎年多くの人命が失われているし、スマトラ沖地震や東日本大震災の津波被害は今でも記憶に新しい。現代人はこれらの天災が起きるメカニズムを知っているから「神の怒り」だと言う人はあまりいないわけだが、それでも東日本大震災を「天罰だ」と言った著名政治家もいる。大洪水を「神の怒り」だと考えた古代人を、我々は迷信深い人たちだと批判することはできないのだ。

 聖書に書かれているアララト山が、具体的にどの山なのかは不明だ。トルコのアララト山は12世紀になって「聖書に出てくるアララト山はこれだろう」と命名された山で、これがノアの箱舟が漂着した山である確証はひとつもないようだ。

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